TECHNOLOGY

【テクノロジー研究】

QuSome®膜の研究及び新規素材の開発

QuSome®とは、b.glenが独自に開発した非イオン性界面活性剤であるPEG脂質で形成されたリポソーム類似ナノカプセル(ニオソーム)です。QuSome®は、ドラッグデリバリーシステムの『浸透テクノロジー』といわれる技術の一つで、美容成分を肌へ効率よく浸透させることができます。

本研究では、QuSome®にコレステロールやコレステロール誘導体を組み合わせることで多重膜が強固またはエラスティック性を持ったQuSome®の開発に成功しました。そこで新たな進化型QuSome®の浸透評価を行いました。

図1. 各QuSome®画像(偏光顕微鏡にて撮影)

コレステロール類を添加することによって、QuSome®の多重膜が偏光顕微鏡での画像で確認しやすくなり、多重膜の物性に影響を与えていると考えられます。またオレイン酸コレステリルを添加したQuSome®では、多重膜に弾性及び柔軟性が加わったように確認できました。

また、現在QuSome®の形成成分として、ジミリスチン酸PEG-12グリセリル(GDM-12)、ジステアリン酸PEG-12グリセリル(GDS-12)、ジステアリン酸PEG-23グリセリル(GDS-23)がありますが、今回新たにジオレイン酸PEG-12グリセリル(GDO-12)の開発を行い、浸透評価を行いました。

QuSome®膜の物性を変えることでの浸透に及ぼす影響の研究

QuSome®は、多重膜を有するニオソーム(リポソーム類似ナノカプセル)です。QuSome®の多重膜の物性をコレステロールまたはオレイン酸コレステリルを組み込むことで変化させ、それぞれのQuSome®で浸透比較、および浸透評価を行いました。

コレステロールまたはオレイン酸コレステリルを用いたQuSome®の浸透比較  (クリックタップで詳細を表示)

三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)を用いて、 浸透比較を行いました。

評価サンプル

  • 1.Control (0.1%カルセインNa 水溶液)
  • 2.N-QuSome(Nomal型:従来のジミリスチン酸PEG-12グリセリル(GDM-12)のみ
  • 3.5%Chol-QuSome(GDM-12に対し5%分をコレステロールに置き換え)
  • 4.10%Chol-QuSome(GDM-12に対し10%分をコレステロールに置き換え)
  • 5.33%Chol-QuSome(GDM-12に対し33%分をコレステロールに置き換え)
  • 6.10%OC-QuSome(GDM-12に対し10%分をオレイン酸コレステリルに置き換え)
  • 7.33%OC-QuSome(GDM-12に対し33%分をオレイン酸コレステリルに置き換え)
  • 8.50%OC-QuSome(GDM-12に対し50%分をオレイン酸コレステリルに置き換え)

方法

三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からカルセインNa含有試料を150mg適用し、37℃にて6時間インキュベーションしました。

6時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のカルセインNaを抽出して、カルセイン蛍光強度 (Ex/Em=494/520 nm)をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、皮膚中のカルセイン量を算出しました。また表皮モデルを透過した量についてもレシーバーを回収し、カルセイン蛍光強度(Ex/Em=494/520 nm)をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、透過したカルセイン量を算出しました。

結果

図1. 各QuSome®の浸透比較試験

QuSome®にコレステロールまたはオレイン酸コレステリルを組み合わせると浸透が向上する傾向があること、さらに適切な量で組み合わせることで浸透の向上も最大化されることも確認できました。QuSome®中に重量比で10%分のコレステロール、またはQuSome®中に重量比で33%分のオレイン酸コレステリルがそれぞれ浸透を最大化できる最適な組み合わせということが確認できました。

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糖脂質(セラミド類似構造)を用いたQuSome®の浸透比較  (クリックタップで詳細を表示)

QuSome®にコレステロールまたはオレイン酸コレステリルを組み込むことで、浸透が向上することが確認できたので、次にオレイン酸含有のオリーブオイルを醗酵させて作られた“糖脂質 (Glycolipids) ”をQuSome®膜へ組み込んで浸透評価を行いました。

評価サンプル

  • 1.Control (0.1%カルセインNa 水溶液)
  • 2.N-QuSome(Nomal型:従来のGDM-12のみ)
  • 3.10%Chol-QuSome(GDM-12に対し10%分をコレステロールに置き換え)
  • 4.33%OC-QuSome(GDM-12に対し33%分をオレイン酸コレステリルに置き換え)
  • 5.10%GL-QuSome(GDM-12に対し10%分を糖脂質(セラミド類似構造)に置き換え)
  • 6.20%GL-QuSome(GDM-12に対し20%分を糖脂質(セラミド類似構造)に置き換え)

方法

三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からカルセインNa含有試料を150mg適用し、37℃にて6時間インキュベーションしました。

6時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のカルセインNaを抽出して、カルセイン蛍光強度 (Ex/Em=494/520 nm)をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、皮膚中のカルセイン量を算出しました。また、表皮モデルを透過した量についてもレシーバーを回収し、カルセイン蛍光強度(Ex/Em=494/520 nm) をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、透過したカルセイン量を算出しました。

結果

図2. 各QuSome®の浸透比較試験

QuSome®に糖脂質を組み込むことで浸透が向上することが確認できました。QuSome®中に重量比で20%分の糖脂質で調製したQuSome®は、コレステロールを含有したQuSome®より浸透を向上させました。現在までの評価でQuSome®膜を改良して浸透が最大化されるのは、オレイン酸コレステリルでした。

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新規QuSome®素材の開発および浸透評価  (クリックタップで詳細を表示)

従来のQuSome®は主にミリスチン酸PEG-12グリセリル(GDM-12)やジステアリン酸PEG-23グリセリル(GDS-23)を使用していましたが、今回、オレイン酸を構造内に有するオレイン酸PEG-12グリセリル(GDO-12)を新規で開発し、浸透評価を行いました。

評価サンプル

  • 1.Control (0.1%カルセインNa 水溶液)
  • 2.QuSome type-1 (従来型 でGDM-12のみ)
  • 3.QuSome type-2 (GDM-12: GDO-12 = 3:1)
  • 4.QuSome type-3 (GDM-12: GDO-12 = 1:1)
  • 5.QuSome type-4 (GDM-12: GDO-12 = 1:3)
  • 6.QuSome type-5 (GDM-12をGDO-12 に置き換え)

方法

三次元組織ヒト表皮モデル(EpiSkinTM)の角層側からカルセインNa含有試料を150mg適用し、37℃にて6時間インキュベーションしました。

6時間後に評価試料を除去し、表皮モデル中のカルセインNaを抽出して、カルセイン蛍光強度 (Ex/Em=494/520 nm) をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、皮膚中のカルセイン量を算出しました。また表皮モデルを透過した量についてもレシーバーを回収し、カルセイン蛍光強度 (Ex/Em=494/520 nm) をマイクロフ゜レートリータ゛ーにて測定し、透過したカルセイン量を算出しました。

結果

対コントロール比

従来型のQuSome®(Type-1)に比べて、GDO-12を併用することで浸透力が増す傾向が見られました。特にGDM-12 : GDO-12=1:1で併用したtype-3では、最も浸透を向上させる結果が得られました。

今後ジオレイン酸PEG-12グリセリル(GDO-12)を併用したQuSome®での開発が期待できます。

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